Hammond A100のレストア 7

いよいよA100のレストアの最後です。ハモンドオルガンの心臓部であるトーンジェネレーターという部分にたくさんのコンデンサーがついています。だいたい1964年製以前のものはワックスコンデンサーが付いていて経年劣化しています。これにより音がこもったハリがない感じで本来の音ではない状態になります。これを解決するにはこの部分のコンデンサーを全て交換することになるのですが、交換するコンデンサーにより音も変わってくるのである程度選ぶ必要があります。 

この作業は特に今回レストアしているA100では一人では大変で、重い鍵盤部分を動かすことになるので、尊敬している技師である山本さんにお願いしました。 

40kg以上ある鍵盤部分を慎重に二人で動かして作業できるスペースを作り慎重に交換していきます。作業自体は単純ですが、交換する数がたくさんあるので時間がかかります。そして今回は山本さんにいろいろと伝授してもらいました。 

まず山本さんの作業はとても丁寧で見た目もきれいに修理します。私もその点を重視して整備するのでとても共感できるところです。残念ながらで作業が雑で部品に傷をつけたり、正常に動作すれば良いという感じの人もいますが、整備する側から見て良いとは思いません。 

それでこのコンデンサーはどのくらい数値が狂ってきているか調べてみました。本来の数値の3倍ぐらいなっており、これでは全く本来の音になる訳がないんです。しかしこの劣化したパーツの音が本来の音であるから交換すべきではないという技師やプレーヤーもいますが、それはハモンドオルガンの本来の音、楽器の音をよくわからないと思います。最終的には好みの問題なので劣化した音が好きな人もいるわけですが、工場出荷時の音ではないと思います。 

これでほとんどの作業が終了し、あとは内蔵スピーカーのコーン紙とボイスコイルを交換するのみとなりました。この作業はしなくても良いのですがへたっているので今後のため、本来の音にするために行います。 特に必ずというわけではないのでいつ行うかわかりません。

写真ではどれだけ数値が変わっているかコンデンサーに測定値を書いていきました。 これでどれだけ数値が変わっているのかがわかります。経年劣化しています。

とてもマニアックですが、実はワックスコンデンサーの前期型と赤いMylarコンデンサーの後期型がありますが、約2年ぐらいの中間期にはGeneral InstrumentのGIコンデンサーというオレンジのワックスコンデンサーがあります。私のA100は一部にそれが使われていたのですが、もし全部に使われていたら今回のコンデンサー交換(これをリキャップという)はしなかったでしょう。このコンデンサーは劣化が少なく、ワックスコンデンサーの良い特性を持っているのでこのコンデンサーが全てに使われている場合は交換しなくても良いと思います。 

このトーンジェネレータのコンデンサーの交換(リキャップ)はもっと深い話、たとえば一個一個のトーンホイールの調整が必要かどうかという議論がありますが、これは人により意見がかなり分かれるのでここで止めておきます。 

これでB3同様にA100もとてもいい音になりました。うちにレッスンや遊びに来た方はぜひぜひ試弾してみてください。