Viewing: ハモンドオルガン&レスリー (Hammond Organ & Leslie) - View all posts

依頼を受けたレスリー122修理2 

以前修理したレスリーの修理2回目です。前回はアンプのオーバーホールをしましたが、その際にどうしても歪み系のノイズがするので今回は詳しく調べながら修理していきました。でもお店の開店前とバンド練習のため使用されていた関係で限られた時間は3時間のみ。かなり厳しい状況でした。 

まず疑ったのがホーンドライバーですが、その前にホーンとウーファーを別々に鳴らして確認するとウーファーの時だけでも歪みが発生したので、まずはすべてのネジやビスを確認するとたくさん緩んでいるものがありましたので、すべて締め直しました。 

ホーンだけ鳴らしてみるとやはり歪んで聞こえます。分解清掃、ダイアフラムの位置調節するために分解してみましたら、まずダイアフラムがマグネット側に固着。普通はガスケットがあるのですがガスケットがありません。ガスケットがあるために固着するはずがないのですが、慎重にはがしていくとダイアフラムがくっついているはずの反対側がいとも簡単に外れました。この時点で何かおかしいなと思い、慎重に固着している側を剥がしました。その途中でダイアフラムからの線が切れました。いろいろと観察してみると本来動かして調節するのに糊のようなものがついていて動かなかったこと、ダイアフラムからの線がオリジナルのようにつけられていなかったことなど推測すると、このホーンドライバーは以前に何かいじられた、おそらくダイアフラムが交換されたか何かで、その影響でずっと微妙に歪んでいたのではないかと思います。ということで残念ながら、このユニットは正しくダイアフラム交換と位置調節するしかなさそうです。ただしそんな時間(今週末にこのレスリーは使用される・私が演奏するときに使うためと今後修理にしばらく来られない)がないので自宅にストックしておいた後期型レスリーのローラ製(知り合いの技師にそう教えてもらったので確実ではありません)のホーンドライバーと交換することにしました。ちなみにダイアフラムはアメリカからパーツを輸入しなければならなくて、しかも結構高いのです。もちろん持ち主さんと相談するわけですが、よければこのローラ製V-21を使用して頂きたいと思っています。そしてこのオーバーホールが必要なジェンセンV-21はいずれ私が時間のあるうちに修理できればと思っています。帰宅後にこのローラ製V-21のホーンドライバーを清掃してチェックしたのですぐ交換できるようにしました。その時に初めて自分のレスリーで試しましたが、オリジナルのジェンセンV-21のものと比べても遜色なく良い音がしました。 

 

その他にやったのはクロスオーバーコンデンサーの劣化でこもった音になっていたのでクロスオーバーコンデンサーの交換で信頼のあるTrek II社のものを使用しました。本当に時間がなかったので作業が早い方法をとりました。本来はオリジナルの線がからげてはんだ付けしてあるのでそれをきれいに取って新しいものをはんだ付けするわけですが、今回はオリジナルの線をカットしてそこからはんだ付けして収縮チューブで保護という方法にしました。それぐらい時間との勝負でした。交換後の音はやはり輪郭がくっきりとしていて前とはかなり違います。 

その前にやったのはモーターのOリングの交換で、すでにこのOリングは亀裂が何か所もあったので交換しました。それでも回転時には擦れる音がしたので円盤が取り付けてある場所の位置調整しました。これにはインチの六角レンチが必要になります。その後は埃だらけだったので掃除機で清掃しました。 

ということで今週末の演奏の前にローラV-21を取り付けて作業すべて終了となりそうです。 

できればオリジナルのまま劣化したハモンドやレスリーを修理するのがやりやすいですが、いつもそういうわけではないのでいろいろなことが起こります。でもこれでこのレスリーは今後メンテナンスフリーで何十年もいけるでしょう。

修理したレスリー122のアンプの納品 

修理依頼で完了したレスリースピーカーのアンプを取付けに行ってきました。自宅でテストしたときは完璧でしたが、もともとそのアンプについていた真空管を取付けて持参したオルガンを接続してテストしました。 

修理前より音圧も上がり本来の音量がでるようになりました。回転のスピード切り替えも問題なくスムーズになり修理したアンプはとてもいい感じです。しかしここで少し問題が。まずレスリーに回転を速くするとモーター付近から擦れる音が。この問題探るために蓋を外して中を見るとスローモーターのゴムに亀裂があり、かなり良くない状態ということがわかりました。これは交換しないといけませんが交換に必要なゴムリングは自宅にストックしてあるので次回の修理依頼でできれば交換したいと思います。 

音に関してはかすかな歪が。本来の状態の良いハモンドとレスリーはボリュームが大きくなければ歪まないので明らかにこの歪はおかしいと思いました。ここで考えられるのはホーンのツイーターの振動板がずれているかゴミが挟まっていてクリーニングが必要か。ボイスコイルの状態が悪いのか。もしくは真空管の状態か。 

いろいろと疑い場所があるわけです。でも大体は検討がつくのですが、これらを1つ1つ消去法でチェックしていきながら直すわけで、残念ながら今日は時間切れ。今の状態でも音的にはそこそこいいのですが、レストアした状態と比べるとまだまだな感じです。ということでビンテージハモンドとレスリースピーカーをしっかりとメンテした状態にするというのは時間とコストがかなりかかります。ここでどこで妥協するか、どこまで修理するかが個人個人の判断になります。時間と予算がある人、どうしても最高の音にしたい人、DIYで直せる人は徹底的に直すといいと思います。 

依頼を受けたレスリー122アンプのレストア 

ようやくまとまった時間がとれたので依頼を受けたレスリースピーカー122のアンプの修理を終えました。すべてのコンデンサーと抵抗、ダイオード、スピードを切り替えるリレー、接続するために6ピンソケット、ボリュームポットを交換しました。ということでトランス以外のすべてのパーツを交換となりました。予想以上に修理の時間(10時間)かかってしまいました。 

交換だけならそこまでかからないのですが、まずこのアンプは以前に誰かが配線を滅茶苦茶に接続して一部のパーツ交換した形跡があったため、すべての配線をチェックしながら本来の配線に戻しながらパーツをすべて交換しました。配線のはんだ付けも信じられないぐらい雑でした。よく今まで動いていたのが不思議なくらいです。直しているときはかなりの怒りがこみ上げてきました。修理するなら中途半端ではなく、良いパーツを使い、しっかりとした修理をすべきだと思います。ということで誰かがいい加減な修理をしたものを修正してレストアするのは余計な時間と仕事が増えた結果となりました。 

完成してテストをしたら本来の良い音で動作もすべて正常に確認できたのできたので、無事に修理を終えました。 

修理技師も数人素晴らしい方を知っておりますが、あまり知識がない技師(ハモンドやレスリーの修理経験がない)には頼まないほうがいいと思います。今回はおそらくあまり知識がない、経験がない修理技師がパーツを交換してその際に配線も変えてしまったのだろうと思います。私は自分で修理できたらいい、日本では自分の年代やそれより下の年代でハモンドとレスリーを直せる人を知らない、そして今後この楽器を存続させるためには誰かが直せないと存続が危ないと思ったので修理し始めましたが、その時でもサービスマニュアルやレストアマニュアルの本を何回も読んで作業を把握してから実際に修理しました。今でも慣れてない箇所や直したことのない箇所は事前にかなりのリサーチします。もちろんそれでもいろいろと小さな失敗は時々起こります。幸いハモンド修理技師が集まるサイトがあったり、またお世話になっている先輩の技師にも時々アドバイスもらったりしているので助かっています。もうビンテージのハモンドオルガンやレスリースピーカーは生産されていないので大切にしたいですね。 

ということで来月このアンプを届けるとともに演奏するので楽しみです。きっと良い音で鳴ってくれるでしょう。お店の方やお客さんもレスリースピーカーで鳴る音の良さが伝わってくれればさらに嬉しいですね。

 

 

Hammond B3の最後のレストア 

ハモンドB3のレストア最後の工程です。ここまでやるほ修理技師はほとんどいないと思います。 

よく上鍵盤のレールの塗装が剥げて錆びていることがあるのですが、以前は自分でタッチアップの塗装でかなり目立たなくしていました。でもやるなら徹底的にしようと思ったので、自動車の板金塗装の知り合いにお願いしてサビの除去と再塗装してもらいました。新品のような状態になり、その後は自分でHAMMONDのロゴを取り付けました。これで自宅のB3、A100、レスリー122、45のレストア終了です。まあさらにやるとしたら外観のニスを全てヤスリで落とし、傷や凹みをパテで埋めたり、表面の木を貼り替えたりしてニスを塗るということですが、そのためには中身をすべて取り出さなければならなくてとんでもない作業になるので、その工程はやりません。傷もそのオルガンやレスリースピーカーの歴史ということで。 

オルガンとレスリーのレストアにかかる時間は100時間以上かかります。もちろん状態にもよるのですが、そこまでかからない個体もありますが、だいたいこれ以上手をかけるところがないというところまでするとそれだけかかります。 

見た目そこそこ良し、音最高、鍵盤タッチの感触最高となりました。

 

Hammond A100のレストア 7 

いよいよA100のレストアの最後です。ハモンドオルガンの心臓部であるトーンジェネレーターという部分にたくさんのコンデンサーがついています。だいたい1964年製以前のものはワックスコンデンサーが付いていて経年劣化しています。これにより音がこもったハリがない感じで本来の音ではない状態になります。これを解決するにはこの部分のコンデンサーを全て交換することになるのですが、交換するコンデンサーにより音も変わってくるのである程度選ぶ必要があります。 

この作業は特に今回レストアしているA100では一人では大変で、重い鍵盤部分を動かすことになるので、尊敬している技師である山本さんにお願いしました。 

40kg以上ある鍵盤部分を慎重に二人で動かして作業できるスペースを作り慎重に交換していきます。作業自体は単純ですが、交換する数がたくさんあるので時間がかかります。そして今回は山本さんにいろいろと伝授してもらいました。 

まず山本さんの作業はとても丁寧で見た目もきれいに修理します。私もその点を重視して整備するのでとても共感できるところです。残念ながらで作業が雑で部品に傷をつけたり、正常に動作すれば良いという感じの人もいますが、整備する側から見て良いとは思いません。 

それでこのコンデンサーはどのくらい数値が狂ってきているか調べてみました。本来の数値の3倍ぐらいなっており、これでは全く本来の音になる訳がないんです。しかしこの劣化したパーツの音が本来の音であるから交換すべきではないという技師やプレーヤーもいますが、それはハモンドオルガンの本来の音、楽器の音をよくわからないと思います。最終的には好みの問題なので劣化した音が好きな人もいるわけですが、工場出荷時の音ではないと思います。 

これでほとんどの作業が終了し、あとは内蔵スピーカーのコーン紙とボイスコイルを交換するのみとなりました。この作業はしなくても良いのですがへたっているので今後のため、本来の音にするために行います。 特に必ずというわけではないのでいつ行うかわかりません。

写真ではどれだけ数値が変わっているかコンデンサーに測定値を書いていきました。 これでどれだけ数値が変わっているのかがわかります。経年劣化しています。

とてもマニアックですが、実はワックスコンデンサーの前期型と赤いMylarコンデンサーの後期型がありますが、約2年ぐらいの中間期にはGeneral InstrumentのGIコンデンサーというオレンジのワックスコンデンサーがあります。私のA100は一部にそれが使われていたのですが、もし全部に使われていたら今回のコンデンサー交換(これをリキャップという)はしなかったでしょう。このコンデンサーは劣化が少なく、ワックスコンデンサーの良い特性を持っているのでこのコンデンサーが全てに使われている場合は交換しなくても良いと思います。 

このトーンジェネレータのコンデンサーの交換(リキャップ)はもっと深い話、たとえば一個一個のトーンホイールの調整が必要かどうかという議論がありますが、これは人により意見がかなり分かれるのでここで止めておきます。 

これでB3同様にA100もとてもいい音になりました。うちにレッスンや遊びに来た方はぜひぜひ試弾してみてください。

 

Leslie 45と122のレストア(スピーカー) 

これでレスリースピーカーのレストアの全ての工程は終了です。レスリースピーカーのウーファーは15インチのものでいろいろなタイプのものが使われていますが一番評判の良くスタンダードなものはJensen P15LL (フィールドコイルのF15LLは除く)というスピーカーなのですが、残念ながらで現在は生産もされておらず、またこのスピーカーより良いという代替品はあまり聞きません。 

しかし50年ぐらいは経っているためにスピーカーのコーン、紙でできているのですが相当劣化しています。当然ですね。そしてこのコーン紙とヴォイスコイルを交換してくれる場所は私の知る限りでは日本では知りません。 

アメリカの知り合いの技師から交換キットを作っているところを紹介してもらったので取り寄せてスピーカーのレストアしました。このスピーカーを予備を含めて3つあるので先日勉強しながらスピーカーのコーン紙とヴォイスコイルの交換の仕方を習得したので、今回は2つほどレストアしました。 

音は低音から高音、800Hz以下の音の出方が変わりました。締まった音になりパンチがある音になりました。これが本来のレスリースピーカーの音なんでしょう。 

これ以上メンテナンスできる箇所はないのでレスリースピーカーのレストアは終了です。 

おそらく私の知っている技師の方もここまでやらないと思いますので、Jensen P15LLやその他レスリーやハモンドオルガンに使われているJensenのビンテージスピーカーのリコーンも承ります。ただしRolaやHeppnerのスピーカーのリコーンパーツは手に入らないので対応できませんので、その場合はスピーカー専門の職人の方に依頼することをお薦めします。

 

 

Hammond A100のレストア 6 

ハモンドオルガンのA100の内蔵スピーカーをオフにしてヘッドホンでも練習できるようにTrek IIのOBL-2 SLを装着しました。本体自体に穴を空けたりするのは好きではありませんが、どうしても綺麗な配線で便利な場所に設置するには必要でした。そしてリバーブアンプのトランスがビリビリとノイズを発生させていてどうしても直らなかったので新品に交換しました。あと真空管も殆どがへたっていたので交換しました。 

あとはトーンジェネレーターのコンデンサー交換と足鍵盤のフェルトとプッシャー(金属のベロのような接点でこれよく曲がっていたりコンディションが悪いものが多いです)を交換する予定です。バスバー(多列接点)は今のところ問題なくきちんと音が出るのでバスバーをシフト(位置を変える)して様子を見ることにしました。

 

Hammond A100のレストア 5 

ハモンドオルガンにはコーラスビブラート(C/V)が付いているのですが、その回路でコンデンサーと抵抗で成り立っている部分があります。ビブラートラインと呼ばれるものですが、そのコンデンサーと抵抗を全て交換しました。 

さてこのオリジナルのものはワックスコンデンサーで大体64年以前のハモンドオルガンに使われています。そして必ずと言っていいほど経年劣化しているんです。しかし一部の演奏者や修理技師はオリジナルの部品に変にこだわるあまりに経年劣化している部品を交換しません。そして理由としてはオリジナルのサウンドでなくなってしまうということなのですが、経年劣化した部品では当然オリジナルの良いサウンド、つまり生産されたばかりのサウンドは出ません 。 

と言う訳でこのビブラートラインのワックスコンデンサーと抵抗を全て質の良いこの回路にあったものと交換しました。交換後はとても良い感じでコーラスとビブラートがかかります。 

後期型の赤いコンデンサーのものは交換しなくても良いのですが、ワックスコンデンサーのものは交換しないと本来のスペックには戻らないです。 

ちょうど交換した時に古いこのワックスコンデンサーがどれだけ劣化しているか測定してみました。全部の部品がへたっていて多くは通常の数値の2倍になっていました。これでは本来の音はでません。そしてこれを本来の音とは言えません。 

何回もこの作業はやっているのですが今回は特に綺麗に仕事ができました。 

そしてキャビネットの歪みの原因がわかり、本来あるはずのビスがない事に気が付きました。このビスは特殊なのでお世話になっているパーツショップでも絶対に手に入らないので、ホームセンターに行って互換性のあるものを見つけて取り付けました。こうやっていろいろと直していると過去にどのような事が起きたのかかなり推測できます。このハモンドも家に届いた時はそんなに良い状態ではなかったのですが、部品交換や修理を丁寧に時間をかけてきたおかげでどんどん良くなってきてます。ビンテージハモンドは良くない状態でも修理すればとても良いものに仕上げる事もできます。これは絶対に現行のデジタルオルガンでは部金交換以外はできないです。 

ということであと1/4ぐらい作業が残っている状態です。でもまだ20時間はかかりそうです。やるなら徹底的にレストアします。

 

 

 

Hammond A100のレストア 4 

レストア中のハモンドオルガンのA100がレストアしたレスリースピーカーの45と接続できるようになりました。接続するには26-1キットを使います。リバーブアンプAO44とパワーアンプAO39のへたっているコンデンサーと真空管を全て交換、プリアンプAO28のコンデンサーと抵抗と真空管の多くを交換しました。残るはビブラートボックスとトーンジェネレーターのコンデンサー交換が残っていますがこれは追々作業しようと思います。鍵盤部分は全ての清掃と調節を終えたのでとてもタッチが良くて綺麗です。 

他にも足鍵盤のフェルト交換やその他の作業がまだ残っていますが少しずつ行っていこうと思います。

配線やその他、とにかくできるだけきれいにレストアするように心がけています。

 

 

Hammond A100のレストア 3 

Hammond A100のレストアの続きです。

足鍵盤の接点部分のすべてのクリーニングと錆取り(除去できるだけ) 
足鍵盤のフェルト交換 

ペダルマットの交換(あえて茶色から黒のものに替えてアクセント付け) 

下鍵盤すべての鍵盤のクリーニング 
下鍵盤のシャーシの錆取り 

上鍵盤すべての鍵盤のクリーニング 

両鍵盤のフェルト交換 

ドローバーのすべての部品にクリーニング 

コントロールパネルの接点クリーニング 

マッチングトランスのケース、コントロールパネルボックスケースなどクリーニングと塗装 

リバーブつまみとビブラートコーラスのつまみのクリーニングと塗装 

書いたのを見ると特に大したことないのですが、全部で50時間近くかかった気がします。まとめてなかなか時間が取れないので、できる時に一気にやってしまいました。 

ということで見た目はかなりピカピカの状態で、鍵盤の感触、ドローバーの動き、プリセットキーの引っかかりなどすべてにおいて本当に良い状態になりました。もともとの状態があまりにも埃だらけで汚かったので、それに比べると新品とまではいきませんがそれに近い状態になったのではないでしょうか。 

友人や知人にビンテージのハモンドオルガンを持っている人がいますが、まずこれらの修理はやらないでしょう。というのもやらなくても問題なく動くことがほとんどだからです。ビンテージのハモンドは耐久性も高く、アナログ楽器なので騙し騙し使えます。でもこのA100は63年製なのですでに55年は立っていて全くメンテナンスされてないといっていいほどの状態だったので、今後何十年もメンテナンスしないでとても良い状態で弾き続けるにはここまでするのが必要だと思いました。 

それと一つ一つの箇所を修理するのに時間がかかります。修理する側になってよくわかったのですが、修理技師に依頼してすぐに直るというわけにはいかないんです。もちろん直る箇所もあるのですが、本格的にメンテナンスすると数時間では終わらないんです。でもそれを知っている人は多くないので、すぐ直ることに期待をするのですが、結局一か所直して、その後また他の箇所を直す、最終的には何回も修理することになる場合がよくあります。 

この63年製のA100はかなりリーズナブルで手に入れたので最初からメンテナンスすることを予想していましたが、中を開けてみると錆びていたり、その他意外なことがあったりして計画通りには修理が終わらなかったりします。 

よくいろいろと修理できますねと言われたりするのですが、それはおそらく好きだからだと思います。ビンテージのハモンドオルガンという楽器が好きであり、自分の演奏する楽器について詳しく勉強しようと思った末にできるようになったと思います。もちろん修理に関してもこの先勉強継続ですが、直せるようになると修理は大変ですが、修理が完了してとても良い音で楽器を弾けるようになった時の満足感は言葉にできないです。そしていっそう愛着が湧きます。今後これ以上ビンテージのハモンドとレスリーを所有することはないと思いますが、今では誰かが直したものより、オリジナルもので整備されてないものを購入して自分ですべてレストアする方がいいと思っています。その方がどこの部品を直したのか、どのように整備したかなどすべてわかるので何か問題が起きたときにも問題個所が発見しやすいです。そして丁寧ではない技師が修理するとワイヤーの被覆がはんだで溶かされていたり、はんだ付けがきれいではなかったり、中途半端に部品が取り付けられてたり、余計な傷がついたりと様々なことがあるので、自分で修理するか信頼できる技師に頼んだ方が良いと思います。 

外観はアメリカで高額に販売されるもののように傷がほとんどないというわけではないのである程度歴史を感じますが、ビンテージのハモンドはそんなに状態の良くないものでも一つ一つ丁寧に直していけば音や弾き心地は最高のものになると思います。外観もある程度は修理できます。(それ以上は再生職人に依頼して直せば完全に傷なしの外観状態になるでしょう。) 

いろいろと書いているわけですが、あとプリアンプAO28とパワーアンプAO39のクリーニングと整備が残っているので、ここまで終わればかなり素晴らしい音が出てくれるはずと期待してます。 

ここまでの状態になるまで長い工程でした。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

Hammond A100のレストア 2 

やはり50年以上経って細部までメンテしてないとこうなります。掃除機で掃除したところとそうでないところの違いがわかるでしょうか? 

この爪の先にフェルトが付いていますが、この部品をキーコンブと言います。鍵盤をグリサンドしてカチカチと鳴るオルガンはこのキーコンブがへたっています。応急措置としてこのフェルト周りや鍵盤に薄い布のようなものをつけますが、数が多いと大変です。ということで、交換した方がいいのですが、実はもうこのパーツは新品で手に入らない部品の一つです。状態の良い中古手に入れるか、どこかにまだあるかもしれない新品部品を幸運にも手に入れるか、もしく状態のよいM3などのスピネットから移植するしかないです。あと一つある手段はアメリカに一社このフェルトを張り替えてくれる業者がいますが、時間とコスト、手間がかなりかかります。 

幸いこのA100は汚いですが、あまり弾かれなかったようで、このキーコンブの状態はとても良いです。なので爪の下にあるフェルトを掃除して裏返しに装着すればまだまだ新品のような感覚になります。 

それとコントロールパネルを開けて掃除と接点に接点復活剤のDeoxitの散布。コントロールパネルのカバーは塗装をしました。これによってショートの原因になるハモンドヘアーと呼ばれるウィスカーが発生しなくなります。

 

 

 

Hammond A100のレストア 1 

どうやらうちにやってくるビンテージハモンドは何か問題があって、どこかしらいろいろと修理の必要があるみたいです。どうしてでしょうか。もっと勉強していろいろ直しなさいと言っているでしょうか。本当はもっと楽に修理したいのです。今回は前回のB3と違う箇所を修理することになってます。

まずは周波数変換器取り付け。Trek IIのものは大きすぎてうまく収まらないので違うものであるKeyboard Partner製の周波数変換器を取り付けました。これはモーターの回転を60Hzにするためだけなので取り付けはTrek IIに比べとても簡単です。そしてトーンジェネレーターからのワイヤーが3本切れていたのではんだ付けしました。一通りの外装の清掃とレストア。中を調べると大きな亀裂があったのでボンドとパテの流し込みで修理。まだまだ続きますがとりあえず1日でいろいろやりました。 

やっぱり55年経っている楽器だからオーバーホールはしょうがないです。 

 

 

Hammond A100が届く 

大雨の日に63年初期製のA100がカナダから届きました。およそ1ヶ月ぐらいかかったでしょうか。Ebayで価格交渉して購入し、木枠業者で梱包してもらい、ヤマトの船便で横浜港まで運んでもらい、ピアノ運送会社に自宅まで届けてもらいました。木枠のため雨に濡れないように屋根付きの駐車場で木枠を外し、そこから家に運び込みました。工具一式揃っているので電動ドリルで木枠解体手伝いました。さすがに運び込むのは業者さんの方が慣れています。 

まあやはりオークションの写真と違いますね。だいたい写真の方が綺麗に見えます。実際は結構外観に傷があります。でもある程度まで綺麗に修復できそうです。ホコリだらけなのでまずは掃除からしないとなりません。 

これから少しずつ時間を見つけてこのA100を徹底的にレストアします。前回58年製のB3をレストアしたので問題はありませんが、リバーブアンプと内蔵アンプもあるので修理する点数は多いです。ざっと見た感じはほぼ全て、内蔵スピーカーの1つ以外は手がつけられていないオリジナルな状態のようです。 

時間はかかりますがこれをレストアしたらどんな音になるか楽しみです。自分で整備するといっそう愛着が湧きます。これから最高の状態になるようにレストアをしていきたいと思います。

PS. 英語で交渉、海外と日本国内の運搬業者手配、自分で修理できる人は輸入はいいと思いますが、そうでなければ日本の販売店の方がいいかもしれません。

 

Leslie 45のレストア 

ようやくLeslie 45 スピーカーのレストア終了しました。修理前後の写真も加え説明したいと思います。今回取り寄せたパーツで交換したものは、 

パワーアンプのブロックコンデンサー、コンデンサー、抵抗、ダイオード、ボリューム抵抗(これは交換せず) 、リレー (回転切り替えに必要)

 

*ブレーキ回路はファーストに切り替えたときに直流電流を流してしまうのでモーターに良くないということで除去しました。

6550、OC3、12AU7の真空管

マウントゴム

クロスオーバーコンデンサー(Trek II) 

 

ロワーローターのマウントのゴム

モーターのマウントのゴム

ベアリングのゴム

スピンドルのゴムワッシャーとマウントゴム

ロワーローターのベアリング 

 

プーリーのベアリング 

バックパネルのネジ

*その他オリジナルで全く消耗していないパーツはそのまま使います。 

そして、作業はパーツ交換以外に 

アッパーモーターとロワーモーターの分解清掃とオイル注し 

ホーンの清掃(中性洗剤で汚れ落とし)

Jensen V-21(ホーンドライバー)の分解清掃と調整

ローターの清掃

 

Jensen P15LL(ウーファー)の補修(表面上のヒビなど広がり防止の為にボンドを水で薄めたものを塗る)

内部の清掃(濡れた雑巾で中の埃を取る)

外観の補修(Howard Restore Finishとスチールウールで磨き、オレンジオイルで仕上げ)

 

という工程をすべて行いました。これ以上レストアするところはもうないというところまで行いました。ここまで行う業者(一部のアメリカの業者以外)は私の知る限りではありません。修理技師の方々も頼まれれば行うでしょうが、まずここまで依頼する人はいないと思います。 

ここまでするとこの先何年もメンテナンスフリーでずっと使えます。テストを行ったときもとても良い感じでした。しいてもう一つ行うとしたらウーファーのリコーンなのですが、これはリコーンキットをアメリカから取り寄せて、スピーカー専門業者に持ち込みでリコーンをしてもらうしかありません。おそらく慎重にやれば自分でもできるとは思いますが、ここは専門外なので業者にお任せようと思います。 

今回の修理でもたくさん学ぶことが多かったのですが、他のレスリースピーカーをレストアした経験から工程自体は問題はありませんでした。しかしやはり時間がかかりますね。自分のものということで丁寧にやりすぎてしまってかえって時間がかかりすぎてしまうということでした。 

来月にはHammond A100が届くそうなので、時間を少しずつ使いながらまたレストアしたいと思います。レスリーよりも行う工程がはるかに多いのでさらに時間がかかると思いますが、少しずつ行いたいと思います。 

アメリカからパーツの調達や修理もできますので、依頼を引き受けます。技師として私が尊敬しているハッチ工房の山本さんが忙しくてなかなかできない時は喜んで引き受けます。 

Leslie 45の修理開始 

一昨年にHammond B3とLeslie 122を自宅に届いた時に置く場所がなくてしばらく友人に預かってもらっていたLeslie 45を引き取りました。早速音が出るかを確認した後に中身を開けました。以前は細かい構造や部品についてよくわかりませんでしたが、B3とLeslieを徹底的にレストアしたお蔭と継続して修理について勉強しているのでよくわかるようになりました。それでまずはアンプがどうなっているか、コンデンサーや抵抗がオリジナルであるのか、交換されているのか、ウーファーやホーンドライバーがオリジナルで何が付いているのか、その他細かいところまで見て、まずはウーファーのコーンに少しヒビが数か所入りかけていたので、補修しました。本当はリコーンするのが良いのですが、できるだけオリジナルのものを大切に使いたいので、ボンド(ボンドを使いますが水で薄めて硬くなりすぎないようにします)でヒビの部分や部分全体的に補修しました。これで大丈夫ですが、気に入らなければリコーンをするという事にしました。それ以外は隅から隅までレストアするにはアメリカからパーツを取り寄せなければならないので、交換するパーツをメモし、オンラインで注文。 

今日は今度家に届く(と言ってもおそらくまだ船便で一ヵ月はかかり、現在はカナダで木枠梱包を終えたばかり)Hammond A100のレストアに必要なパーツが届いたので早速検品。これであとはオルガン本体待ちになりました。 

ということで、オルガンの到着を待つ間にこのLeslie 45をレストアする予定です。このレスリーは一般的な122や147と比べ、古いモデルでスロー回転がないストップとファーストのみですが、キャビネットのつくりやモーターなども実はしっかりできているんです。音も現時点でもかなり素晴らしいのですが、これを徹底的にレストアするとさらに良くなるので楽しみです。 

ということで修理日記でした。また今年も修理話が続くと思います。工具も修理に必要なものがほとんどすべて(インチのものやその他特殊な工具も)あるので、修理の依頼にも対応できるかと思います。 

なんだかミュージシャンだか修理技師だかわからないようになってきていますが、これも自分が演奏する楽器ということで音楽活動の一部ということでやっております。

 

 

63年製のHammond A100を購入し輸入 

以前から気になっていて新たにHammond C3かA100が欲しいと思い、予算を決めてしばらくの間インターネットで探し、良いものが見つかったら出品者に連絡し、アメリカの市場価格と比べて値引き交渉、船便で日本に送れる会社を探し、大まかな見積もりを出してもらい、一番費用が手ごろな会社を選定し、商談を成立させ、これから木枠を作ってもらい北太平洋をカナダから船で横断して日本に到着予定です。着いたら徹底的に修復して練習やその他に使用したいと思います。状態は良さそうで、63年初期に作られたこのA100はB3と若干作りが違うのでまた修理の勉強のためにもと思いました。 

ある程度時間をかけていろいろなサイトで見つけて写真で年代や状態を判断し、出品者に連絡を取り、値引き交渉を行うという手順です。個人売買の方がさらにお手頃な価格で購入できますが、家まで引き取りに行くという事がほとんどの場合なので、木枠を組める運送業者が近くにあれば良いのですが、そうでない場合は送料でとても高くつきます。なので場所や相手も選ぶ事も重要で、ハモンドオルガンを国内外に送った事のある個人経営のお店を選ぶことが多いです。そしてアメリカやカナダは広いからなかなか大変です。最初は状態の良い初期型のC3もお手頃なのが見つかったのですが、大きさと置く場所の都合で断念し、A100になりました。手間がかかりますが、このA100は今のデジタルの2段鍵盤のオルガンの店頭価格より遥かに安くなりました。その代わり送料と輸入手続き(ちなみに日本へ輸入の場合、楽器は関税はなし、消費税と地方税のみ)があるのでこれが少し費用が掛かってしまいます。なので写真や出品者やりとりで年代や状態を判断、そして修理できれば選択がかなり増えます。 

いずれ今回の輸入プロセスについてさらに詳しく書きたいと思います。 

たまにアメリカやカナダからビンテージハモンドオルガンを輸入して修復して販売すればよいと言われますが、私の経験上、日本の住宅事情、メンテナンスが必要になる、そして修理技師の不足、その他もろもろを考えるビンテージハモンドは残念ながらなかなか売れません。今のデジタルハモンドを選択する人がほとんどで商売は難しいと思います。しかし今のデジタルハモンドや現行のレスリーは状態の良いビンテージには絶対に勝てません。それだけ素晴らしい楽器だという事ですね。

 

 

ハモンドオルガンとレスリーの修理 17 

レスリー122の上下のモーターのノイズが洗濯機のようにうるさくて、オルガンのボリュームを小さくして演奏する時にモーターの音の方が大きかったので、もう一度全部分解してオイル注してすべてのゴム足も交換しました。半年ぐらい前にも分解清掃したのですが、それでも直らなかったので今回はさらにオイルを注入してモーターの中身のワッシャーなども交換しました。以前にホーンのモーターはいじられたような跡があり、少々部品の不具合がありましたが、ローターのモーターからの一部移植と家にあったパーツで何とか事なきを得ました。今はかなり静かになったのでこれで終了です。

これでモーターの修理、アンプの修理、スピーカーコーンの一部ひび割れの修理、ホーンの清掃と調整、ベアリングの交換、クロスオーバーコンデンサーの交換などすべてやれるべき事はやりましたので、当分修理しない事を願ってます。

B3の方は定期的なメンテナンスという事で真空管のチェック、一部の真空管の接点をよくするために接点復活剤のDeoxITを塗り、バスバーをシフトさせて他列接点場所を移動しました。

修理するのは楽しいのですが、気持ちの良い音で練習する時間に使いたいので、ひとまずこれでハモンドB3とレスリー122の修理・調整を終わらせたいと思います。また不具合が発生すれば修理したいと思います。

でも実はレスリー45も他に所有しているんです・・・。(笑)もし場所があったらA100かC3を購入してまたじっくりとメンテナンスしたい気持ちもありますが、残念ながら場所がない状況です。アップライトピアノを売ってオルガン2台置くか検討中ではありますが・・・おそらくしないと思います。

 

ビンテージハモンドオルガンのあまり知られていない重要なこと 

オルガン奏者の友人である山口さんのお宅にお邪魔して、大変お世話になっているハモンドオルガンやレスリー、その他などの修理技師である巨匠、ハッチ工房の山本さんの修理を見学に伺いました。 

なぜ見学に行ったのかというと、とても大変で興味深い工程が見られたからです。今から書くことはとても大事なことで、実は多くの日本のハモンドオルガン奏者や関係者は知りません。業者も知らない人が多いです。そして知っている業者はこの情報を隠すこともあるので、私がこのことを書くことをおそらく好まないでしょう。しかし、とても大事なことなので書きます。 

ハモンドのB3, C3, A100, RT3などいわゆる人気のモデルは製造年の期間が同じではありませんが、基本的に1955年ぐらいから75年あたりまでと言われています。中身の材質、職人の質、その他いろいろな変更が行われましたが、64年が大きな境目だと私は思います。 

それは、鍵盤裏の内部の一番奥にとても多くの髪の毛ぐらい細い抵抗線があるのですが、これを覆っているものが64年あたりに材質が変わりました。フォームに変わった(2枚目の写真でよく見えます)のですが、これが実は経年劣化で酸化して、酷いとこの抵抗線を切ってしまいます。この抵抗線が断線すると音が出なくなります。そしてそれを修復するにはとても大変です。というのも、まずは鍵盤の部分を外し、それから内部を開けていき、どの程度の状態かを見て、そして対策をします。この状況を見るには全部開けるしかなく、そこまでの作業工程がとても大変で時間がかかります。幸いにもこの山口さんの70年代製のオルガンのフォームはボロボロで粘々としているわけでなく、また酸化して抵抗線を断線させていない状況だったので、きれいに除去することとなりました。それでもこの修理はだいたい3・4日ぐらいかかるようです。鍵盤のアセンブリーをすべてオルガン本体から出して机の上で作業すればもう少し時間はかかりませんが、かなりのスペースが必要です。ちなみに酸化して断線してしまった場合はつなぎ合わせるのが大変で、またそれが何本も断線してしまうととても大変です。 

ですが、これはオルガン一台一台状況が異なります。つまり、ある意味では不発弾のような状況と言えるかもしれません。もしかしたら断線して音が鳴らなくなるかもしれない、ダストのようにボロボロで害を及ぼさないかもしれないなど。64年以降のハモンドB3, C3, A100, その他同じ構造のオルガンはこのリスクがあります。 

ということで、64年以降のハモンドB3などを所有している方、もしくは購入を考えている方はこの点を知っておいた方が良いと思います。過去に除去していない場合は必ずこのリスクがつきまといます。 除去してしまえば安心できます。

ちなみに64年以前のものはフェルトで覆っているので、このフォームで抵抗線が断線するリスクはないです。確かに64年以前のものはこのフォームの問題はありませんが、コンデンサーがワックスコンデンサーであるため、トーンジェネレーター、プリアンプ、ビブラートライン等のコンデンサーは劣化をしており、本来の音ではなかったりします。私のB3はこれらのコンデンサーと抵抗を交換しましたが、この作業も大変です。64年以降のものはワックスコンデンサーではないので、経年劣化はあまりなく、交換する必要もあまりないです。64年以前・以後のどちらも良い点や悪い点がありますが、しっかりとメンテナンスすればとても良い状態になります。私の意見ですが、本来業者や個人が高額な値段で売却する場合はどちらのオルガンにしてもしっかりと整備すべきだと思います。アメリカのきちんとした業者は整備して売却するので、高額であるのも納得できますが、残念ながらそうではない場合を日本ではよく見ます。

 

ハモンドオルガンとレスリーの修理 16 

ここ数日空いている時間を使って自宅のレスリースピーカー122のメンテをしました。今回は2つのモーター(スローとファーストのペアが上下2つ)を分解・掃除・オイル注し、ホーンのJesnsen V21の分解・掃除、ローターのベアリングとゴムの交換、ホーンのプリーとベアリングの交換、アンプのリレーの交換、そして全体の掃除を行いました。 

驚くことにゴキブリの死骸が5匹出てきました。Jensen V21のところから小さいのが3匹、ローターの中から大きいのが2匹、うちに引き取られる前からあったようです。このV21の掃除はコツがありますが割と簡単です。 

モーターはそこまで難しくはないのですが、大きな問題が。それは六角レンチの小さいのが一つインチで必要で、もうひと一つ別にラチェット(もしくはスパナ)も1/4というサイズが必要です。この二つがないと最低でも分解できないんです。たまたま六角レンチはコーナンのホームセンターにあったので助かりました。油汚れは呉のパーツクリーナーで除去し、そしてレスリーオイルを注して、スロー用のOリングも交換。ゆっくり時間をかけて丁寧に作業しました。 

ベアリングやゴムのパーツは事前にアメリカから取り寄せておいたので難なく取り付けられました。ただゴムの交換は意外に大変でした。たくさんいろいろな箇所にあります。 

ローターの掃除中には大きいゴキブリの死骸が2匹出てきました。いつのゴキブリでしょうか・・・。

最後に回転がスローにならなかったので、リレーを交換しました。以前にアンプのコンデンサーと抵抗は交換しましたが、ノイズの問題があり、ハモンドスズキを通してお世話になっていた修理技師の大野弘光さんに修理して頂きました。(話は長くなるので省略しますが、私のレベルでは問題箇所が分からなかったので、問題解決と真空管のソケットやその他を交換・改良して頂きました。)その後、たまたまリレーが悪くなったので今回は私でも交換できるので交換して、アンプはとても良い状態になりました。 

そしてすべての掃除をして終了。 

この122は74年製のものなのですが、とにかく修理・メンテできるところはこれで終了です。残念なことに、この時代のレスリーの一部はMDF木材が使われているので、ボロボロと木くずが出ます。そして箱鳴りも若干違います。61年の45のレスリーも持っているのですが、これはMDFは使われていないので、しっかりとした木で箱なりも素晴らしいです。そんな訳で後期のレスリーはあまり好きではありませんが、今回の修理とメンテで大変良くなったかなと思います。(ただし一部木の材質を変えることはできませんが、まあ良しとしましょう。) 

やっと58年のHammond B3と74年のLeslie 122のメンテが終了しました。これで思い当たるすべての箇所は修理したはずです。ほぼ10カ月ぐらい少しずついろいろなところを勉強してはメンテや修理をしてきましたが、とても勉強になりました。これで今後も良い状態で保てそうです。 

しかし、ここまでできると今度ハモンドC3やもっと初期型のレスリーが欲しくなります。それをまた修理して良い状態にして・・・と考えるのですが、置く場所がないので断念します。それか初期型(55年から57年)のB3が欲しいです。64年以降B3やC3などはウレタンフォームがレジスタンスワイヤーを酸化させて切ってしまうリスクがつきまとう(この修理はとても大変です)のと、後期型はキャビネットの質、鍵盤部分の一部の質、ドローバー一部の質、バスバーの質などが初期型や中期型に比べると違うので個人的には購入しません。ただし、初期型と中期型のコンデンサーはワックスコンデンサーなので劣化します。この話はいずれの機会にて話をしたいと思います。

 

 

 

 

ハモンドオルガンとレスリーの修理 15 

ハモンドB3とC3には鍵盤の部分をカバーするように蓋(フォールボードという)が付いていますが、そこの蝶番が古いので錆びたり黒ずんだりします。黒ずみや錆があったのでピカールとスチールウールで磨きました。すると新品のように輝くようになり見た目も良くなりました。

 

ハモンドオルガンとレスリーの修理 14 

以前にレスリー122スピーカーのアンプのコンデンサーと抵抗を交換しましたが、その後しばらくしたら突然ノイズが時々発生するようになり困っていました。知り合いの技師の人達にも聞きましたが、結局答えがわからなかったので、もう一度アメリカの業者からコンデンサーと抵抗のキットを注文しなおして、全交換しました。ただし今回は前回と違い、元のワイヤーもハンダもすべて取り外して、新しい部品とハンダ付け直しました。そして音量ボリュームポッドも交換しました。原因はわかりませんが、おそらくこのボリュームポッドだったかもしれません。作業には7時間ぐらいかかりましたが、問題は直り、ノイズもなくとても静かになりました。もちろん音も素晴らしいです。やはり時間はかかっても丁寧に修理するもんですね。これでビンテージレスリーのアンプのオーバーホールの仕事も依頼がありましたら問題なくできそうです。あとはレスリーのモーターの整備だけで、近日中にできたらと思います。

 

ハモンドオルガンとレスリーの修理 13 

順調に動いていたのですが、スタートモーターの調子が悪くなり、ギアがシャフトに接続するのがスムーズではなくなったので、今回はスタートモーターをメンテナンスしました。

ハモンドオルガンを起動するときにはまずはスタートモーターを回転させて、高速回転で一定になったらランモーターに切り替えてランモーターが駆動して音が出るようになるという仕組みです。

このスタートモーターの起動が悪くなることがあり、大体の原因はシャフトやギア付近に付いているオイルが固まり、動きを悪くしたりすることが多いです。そこで、そのオイルを除去します。その除去にはKureのパーツクリーナーを使って除去しました。そうするとギアがスムーズに接続され起動がスムーズになりました。念のためにクリーニングした部分に少しだけ新しいハモンドオイルを注しました。また、スタートモーターを固定している2つの六角ピンも緩くなることがあるので、確認しましたら片方が緩んでいたので締めました。


 

ハモンドオルガンとレスリーの修理 12 

いよいよこれで修理の一段落つきました。今回はハモンドオルガンのプリアンプにヒューズを付けました。実はハモンドオルガンのプリアンプには高圧電流が流れていて、トランス(変圧器)が付いているのですが、実はヒューズが付いていないのです。(ヒューズとは電気回路を保護するもの。)なので、トランスやその他が故障するときにとんでもないことになったりします。(ビンテージハモンドオルガンを持っている人、要注意です。)あまりトランスやその他の部品が故障することはありませんが、なんせ50年ぐらいのビンテージもの(うちのは製造されて59年経っています)なので、何が起きるかわからないものです。整備せずにだましだまし使っているとものすごい個所を直すことになります。(でも、それでもある程度は動き続けますが・・・) 

ということで、ビンテージハモンドオルガン用のパーツを作っているTrek II社FPK-28とヒューズをプリアンプに装着しました。これでひとまず安心です。本当は、以前にコンデンサーと抵抗を交換した際にこれを装着すれば良かったのですが、その時はまだそこまで知識がなく知らなかったです。ということで、今日もかなりの配線のはんだ外しと付けるのを行い、時間がかかりました。 

そして、以前からエクスプレッションペダルを押し込んだ時に少しガクッとした感じとノイズがあったので、調べてみると、ペダルがついている木の一部分が切られていました。実はこれはもともとそうなっているのですが、どうもペダルを踏み込んだ時の感じとノイズが嫌だったので、木工用のパテで埋めてペイントしました。(写真はペイントする前。そのおかげでペダルを踏みこんでも安定していてノイズも発生しないです。 

という感じでメンテナンス終了です。オフだったので時間をかけました。もうこれで自宅のB3に手を加えることはないところまで修理しつくしました。今度はレスリースピーカーのモーターのメンテナンスをそのうちにしたいなと思いますが、どうでしょうか・・・ 

修理していて楽しいと感じるのは、自分のハモンドオルガンだからと、おそらくこういう仕事が自分に適しているんでしょうね。ハモンド(特にB3, C3, A100)やレスリーのメンテの仕事も承ります。(笑)でも本気です。

 

ハモンドオルガンとレスリーの修理 11 

まだまだ続きます。今回はボリュームペダルのマットがオリジナルで58年前のものなので新しいものに交換しました。あえて黒のものを選びました。Trek II社の専用のものですが、ちょっと小さいのと、オリジナルのものを取るのに大変苦労したので、少し塗装に傷をつけてしまったので、それを隠すためとちょっと見栄えを変えるために塗装をして、新しいものを張り付けました。これで新品のようになりました。 

後は足鍵盤のバンパーのゴムを交換。(これは残念ながら写真はありません・・・)

 

ハモンドオルガンとレスリーの修理 10 

前回に引き続き、今回は足鍵盤のフェルト(本体側の接点があるところ)の交換と足鍵盤側にある鋭い接点(ペダルプッシャー)を交換しました。これも大変時間がかかりました。その後は新しいキーコンブ(鍵盤を一つ一つ支えている部分で新品や状態の良いものを手に入れるのは難しい)を交換した後にタッチが重くスムーズではなかったので一つ一つペンチでつぶしました。最後に仕上げとしてまたHoward Restore Finishというオイル系の溶剤とスチールウールで全面磨きました。 

これでB3もレスリーもとても良い状態になりおそらく大きな修理は今後あまりないと思います。音も外観も引き取った時と比べ格段に良くなりました。今回のことがなかったら自分で修理することも勉強しなかったのでしょう。今後日本ではビンテージのハモンドオルガンを良い状態で保つには難しくなると思います。というのも良い修理技師は関東に一人(山本さん)、関西に一人(杉澤さん)しかいないからです。(僕の知る限りでは・・・) 

ハモンドオルガン奏者として楽器を弾くことにはある程度詳しいですが、実際に修理できるレベルまで詳しくなかったので、今回のことはとても良い機会に恵まれたと思います。そうでもなければ自分で修理することは覚えなかったと思います。もちろん修理技師としてはもちろんのこと、奏者としてもまだまだなので今後もますます勉強していきたいと思います。