グルーヴについて考える

グルーヴ・・・。音楽をやっている人にとってはとても深い言葉だと思います。(ここでのグルーヴはリズムパターンとかそういう事ではなくグルーヴする演奏という事です。) 

この言葉を意識するようになったのは特にシカゴで活動していた時で、ブルースであろうとジャズであろうとその他の音楽であろうと一番ミュージシャンが大切にしていた事でした。テクニックがあるだの、難しいことができるだの、そんなことよりあの奏者はグルーヴするかしないかっていう事がみんなにとってとても大事でした。だからジャズシーンでよく言われていたのは彼・彼女の演奏はスイングするよねとかハードにスイングするよねっていう事が誉め言葉(ここでのスイングっていうのは4ビートやシャッフルなどでグルーヴするという意味)で、それが何よりも一番大事なことでした。(残念ながら僕はニューヨークのシーンはよく知りませんが、ニューヨーク以外にもシカゴやニューオリンズなどのその他いくつかの都市のジャズシーンも大きいのです。) 

もう10年以上も前にドラマーのHarold Jonesと一緒に演奏した時はほんとにグルーヴしていて、一拍が本当に長かったです。一拍一拍がお腹にボディーブローを受けているみたいで、あれは強烈でした。そして、サックスのPhil Woodsと演奏した時も一人で吹いていてあれだけグルーヴするのは凄いなと思いました。(余談ですが、よく管楽器とかその他はリズムセクションではうわものとかいう人いますが、個人的にこの考え方は好きではありません。やはりなんであろうと個人個人グルーヴするのが大事だと僕は思っています。あくまでも個人的な意見なので気分を損なわないようにお願いします。) 

そして10年以上前にオルガンのTony MonacoやChris Foremanにレッスンを受けるようになったのですが、もうほんと彼らが弾いた後に自分が弾くとなんて細いビート感なんだろう。なんてグルーヴしていないんだろうと痛感しました。 

それから試行錯誤して彼らのようにグルーヴするにはどうしたらいいのだろうかとか考えるようになりました。あと自分の好きなオルガニスト、Jimmy Smith, Jimmy McGriff, Jack McDuff, Don Patterson, Charles Earland, Don Patterson, Big John Patton, Dr. Lonnie Smithなどなどその他のプレイヤーはどのようにグルーヴしているのかと特に考えるようになりました。ベースだったらRay Brown, Andrew Simpkins, Bob Cranshaw, Paul Chambers, Duck Dunn, James Jamersonなどなど挙げたらきりがないですね。その他ピアノだったらGene Harrisとか他にもたくさんいます。ドラムだったら・・・とリストが終わらないので別の機会にでも。 

それで何となくわかってきたのですが、個人個人の身体的能力の違い、感覚の違いなど一人ひとり違うので、グルーヴしているけど感覚というか個々に違いがあると思います。でもグルーヴしているという枠組みの中です。みんなグルーヴしているのだけれど、サウンドが違う、スタイルや個性があるのと同じようにグルーヴ感も個人個人違うという感じでしょうか。 

以前Tony Monacoの左手ベースの弾き方とか真似てずっとやっていて本人にもそこまでコピーしているのはハルしかいないとか言ってくれていたのですが、でも彼のようにグルーヴしませんでした。足鍵盤のタッピングのビートの位置も彼のようにやっていましたが、彼のようにはならないんです。やはり身体的にも感覚的にも違うため同じやり方をやっても必ずしもそうならないのだと何年もたって気が付いたわけです。それでChris Foremanのように真似ようと思ったのですが、またそれもあの感じと同じにはならないのでした。フレーズなどはコピーできても全く同じような感覚で弾くのは個々に差があるので、同じにならないという事でしょうか。 

それでリサーチの日々が続き(現在進行形でもう何年も)いろいろな人を参考にして実際のビデオを見たり採譜したりして、それを弾いて聞き比べてみて”あの感じ”にいかに近づけるというか、あの感じの範囲内になるというかという試行錯誤の日々であります。オルガンって両手両足、足鍵盤と3つあってタイム感も別々にすることできるんです。ドラマーもそうですよね。

ここ数週間時間があったので、とにかくひたすら過去のTonyやChris, はたまたJack McDuff, Joey DeFrancesco, Larry Goldings, Jimmy Fosterなどなどいろいろなレッスンやワークショップのビデオを見て、自分の演奏をビデオ撮影して比べてとやっていましたが本当に奥が深いです。あの黒いグルーヴ感はどうなっているんだろうとずっと考えています。ただこれらのビデオとか音源でわかったのですが、やっぱり一人ひとりグルーヴ感やリズム感の違いがあります。でもやっぱりグルーヴしているから、自分にあったものをいろいろな人から吸収してみて自分の演奏を録音して聞いてみてどう感じるか考えることでしょう。最近になってほんの少しわかってきたというか自分に適した感じに気が付いたような気がします。数日前の発見なんですが・・・。それを実践で無意識レベルでするのには時間がかかるんですね。 

とまあ深夜の呟きでした。生前にJimmy McGriffが言っていましたね。ライブでお客さんが自然と足踏みしたり、肩を揺らし始めたらそのライブは勝ちだって。黒人街で演奏するとジャズであろうと踊る人がいるんです。むしろそれが真のあの黒人クラブの雰囲気で、シカゴの黒人街でレギュラーで演奏するようになってすぐに年配のお客さんに今日はダンスシューズ履いているから躍らせてくれるよなって言われたのを今でも覚えています。それぐらいやっぱり大事なことだと僕は思っています。 

グルーヴ、グルーヴ感、長い長い道のりです。これからも続くでしょう・・・。